2010年11月4日木曜日

フィールド調査in SCZ(5)

ペルネチアの話―

相変わらず深い霧の中です。寒いし、疲れたし、足元は悪いし、休憩しようにも周囲は泥だらけで腰を下ろす場所もありません。Joséがリンゴをくれたので、かじりながら歩くことにしました。


しかし足を置く場所を考えながら、植物を探して、さらにリンゴをかじるのは至難の業です。もう頭が混乱して、何をしているのか自分でもよくわからなくなってきました。。。

以前にとられている標本から、標高や周囲の環境に関する情報を頭に入れてきました。それらしき場所を探してもありません。もうちょっと行ってダメなら戻ろう、と言いながら島の南北を分ける尾根線上に到達しました。ものすごい風が吹きあがってきます。もちろん霧雨とともに。

そのとき、「ここにあるな」と確信しました。今探している対象種は、コメツツジの仲間です。はるか昔小学生のころ、1年にたった1日しか公開していない箱根の二子山でハコネコメツツジを見たときのことを思い出したのです。あのとき霧雨と吹き上げてくる冷たい風に震えながらコメツツジの花を見ました。風衝群落で小型矮小化してしまったコメツツジをみて、「コメツツジの気持ちがわかる」とつぶやいたあの場所と、よく似ているではないですか。

案の定、尾根線の茂みの中に、ペルネチアはありました。


この感動、お伝えしきれないのが残念です。やっぱりペルネチアもまた、寒さに震えながらけなげにかわいらしい花を咲かせていました。小さくて硬い葉っぱも、ちょっとピンクがかった白い釣鐘状の花も、こんなに小さいのに頑張って生きてる感じが愛おしくてたまりません。

ペルネチア(Pernettya howellii)もまた、絶滅危惧種(EN)で、ガラパゴス諸島の中でもここと、イサベラ島の高地にしかありません。(近縁種が南米大陸にあるという話ですが、一度見てみたいです。もしかするとここのペルネチアのご先祖でしょうか?)研究のためとはいえ傷つけてしまうことに申し訳なさを感じながら、ほんの少しだけ枝をもらうことにしました。

さあ、相変わらずの悪路ですが帰りは早いです。こんなきれいなものにも目をやる余裕ができたりして。


滑らないように気を付けながら泥まみれになりながら、途中でミコニアも採取して、どうにか無事に下山しました。

サンタクルス島の高地は、世界に二つとない美しい場所でした。
あらためて、自然に感謝です。

<SCZ採集記・完>

2 件のコメント:

  1. ご無沙汰しております

    楽だとは思いませんが
    楽しく、充実した日々を過ごしてはるようですね

    僕も元気で頑張っていますよ~

    ただ 最近は子ども中心の生活で
    7にはほとんど乗れてません・・(T T)

    今 世界規模で変な気候なので
    くれぐれもご自愛下さいね

    では またのぞきにきますね♪

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  2. KURATA Y. Kaoruko2010年11月5日 2:31

    ありがとうございます。

    ガラパゴスでも今年はラニーニャで特別に寒いらしく、これが日本の酷暑とも関連していたなんて、遠く離れていても世界はつながっているんだなぁ、なんて実感したりしています。

    くぅたぁさんご専門の爬虫類も、固有種揃いで楽しいですよ。
    動物の方が一般的には目に留まりやすいですが、だからこそ植物の危機的状況は表に出にくかったりするわけで、ちょっと複雑。
    藪を漕ぎながら、地味~に植物を見ていきたいと思います。

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