2011年5月3日火曜日

$3,300の大冒険(5)

*なぜここにゾウガメが???

アデラが木の下をじっと見つめています…その視線の先には…
えっ?
ゾウガメです。しかもドーム型の。
幻覚かと思って何度か見るも、やはりそこにはドーム型のゾウガメが草を食んでいました。

なぜこれほど驚くのかというと、ピンタ島のゾウガメは鞍型で、しかもダーウィン研に保護されているロンサムジョージ(1972年に飼育のためサンタクルスへ移動)を最後に自然状態絶滅しているはずだからです。

事の真相:
20105月、国立公園は自然状態絶滅しているピンタ島へゾウガメ39匹を再導入しました。今回出会ったゾウガメは、この導入されたゾウガメでした。

ピンタ島でゾウガメが自然状態絶滅したのは、人間が持ち込んだヤギが野生化し、ゾウガメの食料である植物を食べつくしたためです。当初3匹だったヤギは1979年には約40000頭まで膨れ上がり、島の植生を破壊してしまいました。ヤギよりも動きが遅く、低い位置のものしか食べられないゾウガメは、生存競争に勝てなかったのです。

2003年にヤギの駆除に成功してから、島の植生は急速に回復しました。しかし元の生態系を回復させるためには大型の種子散布者であったゾウガメの存在は必要不可欠であるため、数年前から再導入が検討されていたそうです。この島出身のゾウガメはジョージしかいないので、保護されていたゾウガメ(ペットとして飼われていてどの島の出身かわからない個体)を、繁殖しないようにしたうえでGPSやテレメーターを装着し、ピンタ島へ運んだそうです。よく見ると背中に発信器がついています(もうちょっとうまくつけられなかったのかなぁ…)。ゾウガメを再導入したことで何か問題が起きないか、モニタリングを続けているようです。

再導入されたカメは、いまだ厳しい環境の中で生きていました。彼らが植物の種子を散布し元の植生が復活したころ、ジョージの子孫が故郷へ帰れること。それが我々の願いです。
Manzanillo (poison apple)
人間には毒だが、カメの好んで食べる植物

保全とは、ある生き物だけを守ればいいのではない。
その生き物が元々生きていた環境が維持できていなければ、自力では生きられないから。
それこそが昨今注目されている“保全”の究極の形だと考えます。日本のコウノトリなんかも、いい例ですよね。現在進行形の「保全の現場」に立ち会って、ちょっとした興奮を覚えました。

樹の茂みに悠然と消えていくゾウガメは、大きな使命と期待を担っているのでした。

つづく

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