2011年5月28日土曜日

街での生活(3)

最近私もようやく有名になってきたらしくて(東洋人珍しいので)、道端でもやたら声をかけられて困っています…こちらが誰だか覚えていない…。。
今、行きつけのレストランで声をかけてきて隣に座った人、どこかで会ったけど誰だろう…。向こうはこの前空港で会ったと(スペイン語で)言ってるけど…そうだっけ?こういう時、PC覗き込まれても、独り言で「誰だっけ?」とか口に出しても、相手には伝わらないので助かりますねー。
これまで外国語ができないことを不便に思っていたけど、独自の言語があるって、素敵♪

1)固有「食」物。
実は…前述のように肉を買うことができなかった手前、9月から2か月ほどはタンパク質補給と思ってせっせと牛乳を飲んでいました。しかし、本格的な栄養不足で体調を崩してから、その牛乳すら飲めなくなったこの身体…というのも、ここで売ってる牛乳は「ロングライフ」と言われる添加物てんこ盛りのものだったからです。牛乳のくせに、常温保存で3か月持つとか意味不明…。

で、しばらくもっとタンパク質不足の危機にいたのですが、ピンタへ行った時の料理長ジョージが、いいことを教えてくれました。
「このメロンはサンタクルス産。このヨーグルトもサンタクルス産だよ」
え?サンタクルスでヨーグルト作ってるの?
ってことは、これには保存料そんなに入ってないんじゃないの?
スーパーで確認すると、確かにゾウガメマーク入り(ボトル右下に注目、ただしなぜか鞍型。)、消費期限は冷蔵1か月です。これならいけるかも!?よかったー、島の中でこういうものを作っていてくれて。やはり人間が生活するには家畜って必要なんだなぁ。適正に管理しないと、生態系には大ダメージになってしまうけど…

ちょっと酸味が強いものの、フルーツ入りの「飲むヨーグルト」、とてもおいしいです。これで動物性タンパクとカルシウムはOK!ってことにしよう。

ちなみにその脇の2つのペットボトルは、ガラパゴスで最も消費されている水メーカー2種。その名も「Agua Galapagos」と「Miconia」です。水にもゾウガメの絵や固有種の名前を付けるところが粋ですね。

2)個人レストランの営業紹介になってしまいますが…
毎日の昼定食屋に次いでよく出入りしているレストラン。アルゼンチン式のグリル専門店なのですが、一人じゃそんなに食べられないので、主にフレッシュジュースを飲みに来ています。(この日はカプチーノ。)
3月に帰国された元JICAの柴田さんが、ここのメニューの日本語版を作っていかれたのですが、せっかくなのでもっと宣伝しよう!ということで…
ここでも折り紙は大人気なのです。手先が器用な日本人にしかできないJapanese magicなのでは…
英語もほぼ通じないこの地において、こんなお店は貴重ですね~。きっと日本人の方、ホッとされるのではないでしょうか。
これのお礼に、ジュースごちそうになってしまった。いつもありがとう、Gracias!


PS. 昨年11月、こちらでたまたま知り合った、ブエノスアイレス在住のMさんご一家が再来訪。ようこそ再びガラパゴスへ。
はるばる日本からアルゼンチン、そしてガラパゴスへ運ばれた「日本食」、おそばと味噌汁の素。それにいなりずし用の油揚げ缶詰!?こりゃ画期的☆ Muchas Gracias!

2011年5月23日月曜日

街での生活(2)

塩田発見!

こちらに来て以来、まだ一度も肉を買ったことがありません。どうにも躊躇してしまうのです。いくら涼しい季節でも、直射日光がすさまじい勢いで降り注ぐ熱帯において、ハイラックスタイプのタクシーの荷台に山積みにされて運ばれている骨付き肉を見て、そのあといくらきれいな店で売られていたとしても、やっぱり躊躇せざるを得ないですよねえ…その荷台には、自転車やスーツケースやベビーカーや、人間や犬がのったりもするのですよ。

というわけで、動物性タンパクは牛乳、卵、ベーコンのみで補ってきたわけですが、さすがにこれでは栄養失調です。おかげで体調を崩しやすくなってきました。どうにかしなければ。あー、豆腐が食べたいなぁ~大豆は畑のお肉ともいうし…

などと思っていたときに、街の近くに塩田を発見しました(昨年12月)。海水を天日干しして塩を作っているようです。

近くに行ってみると、結晶がデカい!&しょっぱすぎないうまい塩です。
そして、まだ干上がり切っていない水たまりの水をなめてみると…お、これはかなり真面目にできた「にがり」じゃないですか~。

…ということは。
マーケットで大豆を買って(豆の種類は豊富)、ここでにがりを汲めば、豆腐ができる予感!!!

ダメかなやっぱり、、、
ちょっと怪しいものを食べても寝込まない体力が残っていればやってみてもいいんですが、もう危険な領域な気がします(笑)。


…と思っていた矢先、あのTsunamiがやってきました。

あの塩田は見る影もなく、おそらく海よりも塩分濃度の高い湖として、お魚たちが悠々と泳ぎまわっております…
ああぁ…豆腐計画、ここを去るまでに実行できるか否か!?

2011年5月18日水曜日

赤道の季節感。


¡ Hola !

せいぜい雨季と乾季とか、熱帯域は季節変動をそれほど感じる要素がないように思われがちです。でもここガラパゴスはそんなことはちっともありません。むしろ本当に赤道直下なのかと疑いたくなるような気温にこれからまた戻っていきます…
そんな「変換季」、市場からある週を境にスイカが姿を消したり、メロンが徐々に高くなっていったり、そろそろオレンジが出てきたり(こういう「旬」も日本に居たらそんなに感じないですよね、いつでもなんでも手に入るし)。道端に咲く花も少しずつ種類が変わっていきます。
ちなみに今年は雨季に入るのも遅かった代わりに、変換季に入るのもひと月ほど遅いようです。また異常気象なのか…もう何か正常なんだかわからないですね。


157日。「今日から」秋になった。
※厳密には「秋」という概念はありません。

朝起きたら突然秋の風になっていて、朝晩の冷え方がこれまでより強くなり、日中の湿度も60%代まで落ち込むようになりました(それまで毎日90%超!)。

でも、真っ赤な彼岸花も、むせ返るような金木犀の香りも、虫の声も、黄金色の稲穂も、夕暮れに浮かぶ木立のシルエットも、風に揺れるコスモスも、なーんにもありません。
あるのはただ、いつもと変わらない青い海だけ。
そして屋根の上にたたずむペリカン…
日本の情景ってなんて美しいんだろう。と改めて思ったりするのでした。
もうちょっと海が身近な存在だったら、あの青い海にも季節の変化を感じ取れるのでしょう(ね、Kさま;いつも素敵な励ましメール、ありがとうございます)
もうちょっとじっくり観察しておけばよかったな。

でも、昼間はまだ日差しがあるとものすごく暑いのです。その気温差でダーウィン研スタッフはかなりの割合で風邪ひいてダウン…。私もですが。


2)電燈レストラン
3月中は、子供のころ以来だと思うほど蚊に刺されて腫れ上がっていた手足。4月に入ってヤツらはほとんどいなくなった。※蚊は外来種なので保全の義務はありません。さっさとやっつけましょう。

43週目まで、大繁盛だった「電燈レストラン」。
4週目に入ってめっきり蛾がいなくなって、ヤモリが数匹ご来店なさるも、とても暇そうだったのですが。
510日。
新たな種類の蛾が発生したらしく、再び大繁盛の予感!!!
…あまりうれしくない…(ヤモリはかわいくて好きだけど)

こうして、日々季節は移ろっていくのです…。次は何かな?

¡ Chau !

2011年5月14日土曜日

$3,300の大冒険(6)

*意識朦朧~フィンチのつぶやき

暑くて日差しが強くて、日射病熱射病。水を飲んでも飲んでも脱水状態になると、さすがに意識が朦朧としてきます。
こういう時は目に入ってくるものから妄想が膨らんでくるものです。
目の前にフィンチが飛んできました。私と目が合うとびっくりして一目散に逃げていきました。

「長老、さっきうちの庭で、二本足で歩く大きな動物を見たんだ。あれはいったい何?」
「また現れたか…この島にも時々やってくる、ニンゲンという生き物じゃよ。彼らはかなりの悪さをするが、この島にやってくるニンゲンは今のところ悪さはしない。むしろ自分たちの過去の行いを反省して、この島が昔と同じように豊かな島になるように努力しているはずだ。」
「でも、うちの庭の植物を袋に詰めて持って行ったよ。やっぱり悪い奴らだよ」

…ゴメンナサイ。


*鳥の楽園

ランディングしてすぐにオイスターキャッチャーと目があったわけですが、その後もいろいろな鳥が時々現れます。
■アオメバト(Galapagos Dove、固有種)
目の周りに青いリング。見た目は派手ですが、「くるっくー」と言いながら歩くあたり、ほんとそのまんま鳩です。日本の鳩もこんなだったら、もっとかわいがってもらえるかも?昔は撲殺して食べていたそうです(また出た、破壊王ニンゲン…)。

■ガラパゴスノスリ(Galapagos Hawk、固有種)
エルニーニョでもラニーニャでもあまり影響を受けない、ガラパゴスの生態系の頂点に君臨する王者です。カッコ良すぎますが、さすがに近くで見るとその鋭い目つき、くちばし、爪、、、怖いです。向かってきたらどうしよう。

■ベニタイランチョウ(Vermilion Flycatcher、固有亜種)
オスだけがこんなに美しい真っ赤な体をしています。ニンゲン以外は男性の方がおしゃれ?いや、今どきの若者は男性もオシャレですかね。

やっぱりここは鳥の楽園でした。お邪魔しましたー。
ちなみに植物の方も、これまで図鑑や標本に記述されていなかったものが見つかったりして、満足のいくフィールドワークでした。


*星と朝焼け~遠い意識のかなた

船に戻っても、なにしろ船なのでどうすることもできず、とりあえず汗を拭いて着替えて、ピンタ島に沈む夕日を眺めました。動き出すとご飯も食べられないのを気にしてか、キャップはご飯を食べ終わるのを待って、船をスタートさせてくれました。いやはや…やっぱり船は徹底的にダメです。船泊とか、キャンプで数日から長期の調査に出ている人たちもいますが、たぶん私には無理…

遠い意識のかなた…開いた窓の向こうには、漆黒の空に素晴らしくたくさんの星がちりばめられていた…ような気がします。ああもったいない。あの星空さえも独り占めできたら、本当に幸せだろうなぁ。


*そして、冒険の終わり。

夜が明けて、外を見るとまだサンタクルス島の西側を船は走っていました。相変わらず照りつける日差し。甲板でのんびりと景色を楽しみます。薬が効いているのでしょうか、それとも感覚がマヒしてきているのでしょうか。青い空にはグンカンドリが優雅に飛び回っています。
3300の大冒険の終わり。
すでに活気のある朝の港へ到着し、船も、島も貸し切った、夢のような冒険は幕を閉じたのでした。キャップのエドアルド、料理長のジョージ、働き者のクルーたち、みんなナイスガイだったなぁ。Muchas Grasias!!!

問題は…大量のサンプルの処理ですが、今は考えずにまずはシャワーを浴びないと。

PIT採集記・完>

2011年5月10日火曜日

¡Bienvenidos a Galapagos!

連休を利用してガラパゴスへ遊びに来てくれたのは、親族たち。
「もー、一生分の飛行機乗った!って感じ!」と言いながら現れたPrimo
滞在時間たった2日半の強行日程で、それでも楽しみにしていてくれたPrima母子。
私も便乗して、めったに行かないハイランドでサンプルの状況や実習の下見(6月に学生たちが来る予定)をしたりおいしいものを食べたりと楽しみました。

わおわお~
自分でリクエストしておいてナンだけど、すごい量のお土産!さながら「運び屋」ですね。(Primaの荷物、滞在二日半なのに20キロ超えたのはこのせいですね…ありがとうございます)

日本のスナック菓子、手元にあるだけでなんか安心感が(笑)。

これまでにもいろいろと餞別・差し入れをくださったHさん、Sさん、K先生、O先生、N先生、Yさん、Mさん、本当にありがとうございましたm(_ _)m形あるものはこちらで大活躍、なくなったものは私の血肉となりしっかり支えていてくれています!お礼が遅れてすみません…

楽しんでもらえたかな?
¡Muchas Gracias!

PS. ひと月ほど滞在していた父も、Primoと共に帰国しました。ボルネオでウツボカズラの研究をライフワークとして続けてきた父にとっては、食虫植物のいないガラパゴスは物足りなかったかもしれませんね。次は食虫植物の宝庫、ギアナ高地ですか!? Gracias!

2011年5月8日日曜日

世界遺産へ:東洋のガラパゴス小笠原

【今日のトピックス】
世界遺産小笠原、多様な起源持つ生物がいる「海洋島」(毎日新聞57()1221分配信より)

 小笠原諸島(東京都)が国内4カ所目の世界自然遺産に登録される見通しとなった。大陸から隔絶された「海洋島」は、太古にたどり着いた生物が種の枝分かれをしながら世代をつないだ「進化の実験場」に例えられる。小笠原は江戸時代後期まで無人島だったこともあり、生物は開発から免れた。
 世界遺産の登録件数は現在151カ国・地域の911件に及ぶ。件数の増加に伴い、審査が厳格化している。海洋島の自然遺産では、ガラパゴス諸島(エクアドル)やハワイ諸島(米)が知られる。先行組との差別化が必要な厳しい条件下で、小笠原の価値が認められた理由の一つは、地理的特性から生じた。主に南米由来の生物が残るガラパゴスに対し、小笠原は日本列島やオセアニア、東南アジアなど多様な起源を持つ生物が混在する。植物やマイマイなどの陸産貝類、昆虫で面積当たりの固有種率が高く、同じ生物群の中での遺伝子も多様だ。
 課題は人や物の移動に伴う外来種対策だ。例えば小笠原の陸産貝類は100種の固有種が確認されているが、80年代以降に生息数の激減、絶滅が進んだ。父島では人間の靴底に付着して運ばれる外来種の肉食性ウズムシの影響とされる。
 観光が主要産業の小笠原にとって世界遺産のブランド効果は大きい。だが観光客が急増すれば環境に悪影響を及ぼす。ガラパゴスも、世界遺産の価値が危ぶまれる危機遺産に一時陥った。IUCNは小笠原での取り組みを称賛しているが、今後も外来種の侵入を水際で防ぐため、来島者への検疫など新たなルールづくりが望まれる。

――――――
いよいよ東洋のガラパゴス小笠原が世界遺産登録になる見通し。地元の方は比較的冷静で、ガラパゴスのように観光客の流入によって自然に負荷がかかることを懸念しているようです。
世界自然遺産登録第1号、いったんは危機遺産になりながらも何とか乗り切り、かれこれ30年以上も世界遺産を維持し続けている本場ガラパゴスでの様々な取り組みを参考に、小笠原を適切な状態に維持しながら末永く貴重な生物がみられる場所であり続けられるようにしていきたいものです。
小笠原固有種:ムニンツバキ(伊豆大島の植栽。2010.7.3撮影)

本場ガラパゴスで見たこと・得られた情報、何かの役に立つでしょうか。関係者の方、よろしければお声をおかけくださいm(_ _)m

2011年5月3日火曜日

$3,300の大冒険(5)

*なぜここにゾウガメが???

アデラが木の下をじっと見つめています…その視線の先には…
えっ?
ゾウガメです。しかもドーム型の。
幻覚かと思って何度か見るも、やはりそこにはドーム型のゾウガメが草を食んでいました。

なぜこれほど驚くのかというと、ピンタ島のゾウガメは鞍型で、しかもダーウィン研に保護されているロンサムジョージ(1972年に飼育のためサンタクルスへ移動)を最後に自然状態絶滅しているはずだからです。

事の真相:
20105月、国立公園は自然状態絶滅しているピンタ島へゾウガメ39匹を再導入しました。今回出会ったゾウガメは、この導入されたゾウガメでした。

ピンタ島でゾウガメが自然状態絶滅したのは、人間が持ち込んだヤギが野生化し、ゾウガメの食料である植物を食べつくしたためです。当初3匹だったヤギは1979年には約40000頭まで膨れ上がり、島の植生を破壊してしまいました。ヤギよりも動きが遅く、低い位置のものしか食べられないゾウガメは、生存競争に勝てなかったのです。

2003年にヤギの駆除に成功してから、島の植生は急速に回復しました。しかし元の生態系を回復させるためには大型の種子散布者であったゾウガメの存在は必要不可欠であるため、数年前から再導入が検討されていたそうです。この島出身のゾウガメはジョージしかいないので、保護されていたゾウガメ(ペットとして飼われていてどの島の出身かわからない個体)を、繁殖しないようにしたうえでGPSやテレメーターを装着し、ピンタ島へ運んだそうです。よく見ると背中に発信器がついています(もうちょっとうまくつけられなかったのかなぁ…)。ゾウガメを再導入したことで何か問題が起きないか、モニタリングを続けているようです。

再導入されたカメは、いまだ厳しい環境の中で生きていました。彼らが植物の種子を散布し元の植生が復活したころ、ジョージの子孫が故郷へ帰れること。それが我々の願いです。
Manzanillo (poison apple)
人間には毒だが、カメの好んで食べる植物

保全とは、ある生き物だけを守ればいいのではない。
その生き物が元々生きていた環境が維持できていなければ、自力では生きられないから。
それこそが昨今注目されている“保全”の究極の形だと考えます。日本のコウノトリなんかも、いい例ですよね。現在進行形の「保全の現場」に立ち会って、ちょっとした興奮を覚えました。

樹の茂みに悠然と消えていくゾウガメは、大きな使命と期待を担っているのでした。

つづく