2011年7月25日月曜日

Estoy en el Herbario(3)

そんなこんなで毎日引きこもっての作業ですが、ここではっきり言います。この仕事、関われて本当に幸せです。
もしここに来て間もないころにこの仕事ができたら、私のこの一年、もっと充実したものになっていたでしょう。何しろGeneralにガラパゴスの植物を知っておくと、見えてくるものが違ってきます。道端にあるいつも見る植物に、ある日突然名前がつくのです。知らない人とすれ違ってもなんとも思いませんが、知人とすれ違ったら挨拶する。それくらい毎日が違ってくるんです。

そして、収蔵標本の中にも、身近な人たちがいることに気づきます。
イサベラの農業地域で、なんか見たことのある連中がいるなぁ、と思っていたら、ご本人様だった…

これはビワ(Eriobotrya japonica)です。中国南西部原産らしいですが、学名がjaponica、へえ~~~。そうだったんですね。
「パティ、これjaponicaだよ。イサベラで見たことある。」「へー、日本からなんだ。ここではIntroduceだけど、そんなにActiveじゃないから大丈夫!」
よかったー、これで日本からのが侵略的外来種だったりしたら、申し訳なくなっちゃいます。


「パティ、これ、日本の固有種だよ!」「へえ!日本の固有種なの!?なんて名前?」「ハイドランジア マクロフィラ(Hydrangea macrophylla:アジサイ)」「これも観賞用にイサベラに入ってるね」「うん、見た見た。この属の他の種は花が白いのが多いんだけど、マクロフィラだけは色がついてて、しかもこれは咲き始めから枯れるまで色が変化するから『七変化』って呼ばれてるんだ。シーボルトがヨーロッパに持って帰って、いろいろ品種をつくって…云々…」

お昼時、パティのご主人(国立公園職員)と、彼らの家に滞在中の研究者と4人(+子どもたち)でご飯を食べているとき、パティが「今日、日本の固有種の話聞いたの!」としゃべりだします。「なんていったっけ学名…」「ハイドランジア」「うん?」やはり文字を見ないと難しいのかなと思いながら話は進み…

また標本庫に戻っての作業中、「さっきの固有種、Once more」「(標本を指しながら)ハイドランジア(ラにアクセント)」「あー、OK、イドランヘア(ヘにアクセント)ね!」
はい、確かにスペイン語読みではそうなります。

なるほどーーー。だから最初の頃、英語でしゃべっているはずがなんも聞き取れなかったわけだよね。と改めて思ったのでした。

とにかく、毎日知らなかったことを1つ1つ学んでいく。ものすごく気力も体力も要りますが、充実しています。


そして…
「これ、分類変じゃない?」「え、どれどれ、、、」
ときどき昔の標本の中に、明らかにおかしな分類をされているものを発見します。
あーでもないこーでもない調べつくして…「やっぱこれはこっちだね!」「だよねー」となると、名前を付け替えることになります。

すごい!張り替えられたラベルに注目(読めないですね…)。「Det.: Jaramillo, P. & Kurata, K.」ダーウィン研の標本庫に、私の名前が残るなんて!


標本庫には、ガラパゴスの宝と、自然史学者の夢が詰まってるのです!

3 件のコメント:

  1. お疲れ様です、先生のお名前が残るなんて凄いですね!
    時間があれば私ももっと沢山の標本を見たかったです。
    足を運べない場所のもの、断面の様な自然には見られないものであっても標本なら見ることができてとても楽しかったです。

    アジサイは見ることができて驚きましたが、ビワもあるんですね。
    ビワは好きな食べ物なので、侵略的ではなくて安心しました。

    では、引き続き日本から体調を崩されず良いフィールドワークができることを祈っています。

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  2. 今回のブログの最初の道端で知人と~の件はすごく納得できますね。
    現地でも思いましたが、いろんな知識が多いほどフィールドでも楽しみも増える気がします。

    ダーウィン研の標本に名前が載るのはすごいですね!
    これは帰国して自慢できますね(笑)

    では、体調には気を付けてください。

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  3. 私は自然観察の基本として「名前を覚えること」はそれほど重要ではない(※)と思っていますが、それでも知らないものは知りたくなる、知っていればもっと知りたくなる、という好奇心からの「名前を覚える」は、自分の楽しみを広げるのにものすごくいいことだと思います。

    ※「名前を知ったことで安心してそれ以上探求しなくなる」というのが一般的な知識集積型の観察方法で、それには賛同しかねるという意味。

    知らなければ通り過ぎてしまう物も、より身近になればよく見える。標本庫自体、実際にみなければそれほど興味もわかなかったでしょう?
    そうやっていろんなことが楽しい方が、生きてても楽しいですからね〜。だから分類屋に長寿の人が多いのかしら。


    >稲川くん
    いよいよ来月は沙漠ですね。修論のためのフィールド調査、うまく行くことを祈っています。頑張ってください。

    >前澤くん
    週末のオープンキャンパス、実験準備の雑務、いろいろ頼んですみませんがよろしくお願いします。

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