今日はサンタクルス島の高地でのサンプリングになります。プエルトアヨラを車で出発し、途中のBellavistaでJoséを拾ってから、未舗装道路を2キロほど行くと農業地域と国立公園の境界のフェンスに行き当たります。ここから先、サンタクルス島最高峰のCerro Crocker(864 m)まで徒歩で上ります。
境界までの周辺には、キニーネ、グァバ、ブラックベリーなど侵略的外来種(*)のオンパレード。
キニーネはマラリアの薬として、グァバとブラックベリーは食用として南米から持ち込まれたものです。ガラパゴスにはマラリアはないのですが、入植するときに知らずに持ってきてしまったり、農作物が逃げ出して野生化してしまったりと、様々な外来種が定着しています。こういった外来種は島の在来種を生態的に圧迫し、ただでさえ脆い海洋島独自の生態系を破壊してしまう(**)ので大問題になっています。
*侵略的外来種:人の手によって持ち込まれ野生化したもののうち、特に在来種を駆遂してしまうような生態的特性を持ち、実際に深刻な影響を与えている外来種のこと。
**海洋島では限られた生物のみが海を越えて進出し生態系を形成しているので、大陸と比べて生物同士のネットワークが少なく、1つの種が外来種によって影響を受けると、それを補うような種が存在しないため、すぐにバランスが崩れてしまうといわれる。
ところがフェンスを超えた瞬間に、風景は一変しました。
霧の中に、赤く萌えるミコニアの純林。
なんと美しい風景でしょうか。
ミコニア(Miconia robinsoniana)は、ガラパゴスの固有種です。絶滅危惧種(EN)に指定されており、ガラパゴス諸島の中でもサンタクルス島のこの場所と、サンクリストバル島の高地にしかありません。今私は、この地球上にたった2か所しかない、ミコニアの自生地に立っているのです。
標本では真っ黒に変色してしまってちっともきれいだとは思いませんでしたが、実際に目の前にするとこれまた荘厳な風情を感じてしまいます。
しかし悲しいことに、このミコニア林の中にもちらほらとキニーネやブッラクベリーの姿が…特にキニーネは、ミコニアと同じ生活条件で良く育つようで、うっかりするとあっという間に広がってしまいます。小笠原諸島ではアカギが侵略的外来種として駆除対象となっていますが、まったく同じようにここではキニーネを巻き枯らしにしたり薬剤注入で枯死させたりと対策を講じています。しかし追いついていないのが現状です。
この美しいミコニア林が自然のままに存続できるよう、願ってやみません。
さて、実はこのミコニア、私の研究対象種の1つなのですが、今は素通りします。ここで採取できるもうひとつの研究対象種は、まだまだこの先なのです。
しかし霧で視界も悪く、これでもか。というほどMuddy and Slipperyな道。
…ため息が出ますね。
さて?見つかるのでしょうか…
さて?見つかるのでしょうか…
つづく。
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