2010年10月13日水曜日

ガラパゴスで何をするのか?

¡ Hola !
さて、基礎知識の部分を書き終わっていないので唐突なのですが、先の話もあるので、ここで行おうとしている研究の大枠を先にお話ししておくことにします。

ガラパゴスには、何らかの方法で海を越えて進出してきた植物がここの環境に適応し、さらに島ごとの環境に合わせて細かく種分化をおこした結果誕生した固有種が沢山あります(前述のガラパゴス基礎知識(2)環境」を参照してください)。
それぞれの島の自生集団は地理的に遠く隔離され、種子や花粉が行き来することもほとんどありません。このことが、植物が集団ごとに異なる形、遺伝子、性質に進化していく上で重要です。
しかし1集団に少数の個体数しかなければ、その個々が持つ遺伝子は偶発的に偏りやすくなってしまいます。すると突然の環境の変化や、後から現れた侵入種、病気などに適応できる確率も低下します。つまり集団すべてが死んでしまう可能性が高くなるのです。ここの固有種は元々少数の集団しかないわけですから、集団の消滅=絶滅ということにつながります。

固有種の中でも特に絶滅危惧種がデザインされた広場の壁。日常の中にこのようなものが多々存在しています。

現在愛知で行われている生物多様性条約締約国会議の影響で、日本では今生物多様性が「流行っている」と聞きました。しかし一過性のもでは意味がありません。私たちの生活は、生物多様性の恩恵によって成り立っています。たとえば衣食住すべて、生物に依存しています。薬の成分や機械のデザイン、文化的にも生物多様性がヒントになっている例も多くあります。だから生物多様性は人間の生活にとって非常に重要なのです(*)。
生物の「種多様性」を守るためには、まず1つ1つの種が絶滅しないことが重要です。種の突然の絶滅を回避するには、1つの種の中で様々な状況に対応できる遺伝子があることが重要です。これを「遺伝的多様性」といいます。
私の研究の大きな柱は、ガラパゴス固有種の遺伝的多様性を測るということです。種内の遺伝的多様性を測り、また種間の遺伝的分化(=microevolution)を検出することができれば、それぞれの集団の消滅や種の絶滅を回避するための保全対策に重要な情報となるでしょう。
また近縁の外来種があった場合、外見ではわからなくても交雑していて、固有種本来の遺伝子が失われている可能性もあります(遺伝子浸透または遺伝子汚染という)。これでは本来の固有種とは言えず、遺伝的には固有種が絶滅していることを意味しています。このようなことが起きていないかを早期にチェックし、外来種対策に役立てることもできるでしょう。

自分の家の庭に、外来種ではなく在来種を植えましょう(Native Garden Project)の看板。住民一人一人が身の回りの自然が実は貴重なのだということを認識しないと、破壊は止まりません。特に観賞用や農産物として導入された植物が在来種を圧迫しています。

以上のようなことを目論んで、Microevolución de plantás endémicas en las islas Gálapagos – Conservación de la Diversidad Genética(ガラパゴス諸島における固有植物の“小進化”-遺伝的多様性保全)という題目で、国立公園の研究許可を得ています。研究の過程では
1.フィールド調査―研究対象種の自生個体を集団サンプリング
2.形態的分化の検出―外部形態の集団間分化の検出(要するに形を測りまくる)
3.DNA解析―植物地理、集団の遺伝的多様性検出、浸透性交雑の有無を確認
という3つのステップを経て、研究を進めていく予定です。

*参考文献
「世界を読み解くリテラシー;第Ⅱ部第6講地球環境と生物の未来(倉田薫子)」井上健ら編、萌書房、2010

さっそくサンタクルス島のサンプリングのお話をしていきます。

¡ Chau !

0 件のコメント:

コメントを投稿